活動レポート

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産学共働若手勉強会 自動運転バス見学会 (茨城県境町)報告

 産学共働若手勉強会では、2023年11月28日に茨城県境町における自動運転バス見学会を開催し、14名が参加しました。
 茨城県境町は、東京より車で約1時間、人口約24,000人、「2023年版住みたい田舎ベストランキング」では、北関東エリアの「若者世代・単身者部門」で第1位を獲得した町です。2014 年に橋本正裕町長が就任してからは、約65,000円だったふるさと納税を8年で約60億円にまで増額した実績があります。今回見学した自動運転バスについても、ふるさと納税を活用した事業であり、2020年11月より全国の自治体初の実用化、定常運転を開始しています。実用化は、ソフトバンク(株)の子会社であるBOLDLY(株)が行い、見学会では(株)さかいまちづくり公社 新井様とBOLDLY(株)加藤様にご説明と試乗案内をしていただきました。
 境町は鉄道がないため、公共交通の利便性が低く、免許を返納したい高齢者が自家用車に頼らざるを得ない状況であること、若者が東京に行きづらいことから、町の衰退に歯止めをかけ、住み続けられる町を目指し、施策として自動運転バスを導入しました。既存の地元バス会社と連携した計画となっており、基幹的役割を既存バス路線(町外鉄道駅~境町)、ラストワンマイルである境町町内を自動運転バスが担っています。また、自動運転バスは2021年7月に開所した高速バスターミナルと接続しているため、東京への利便性も確保されています。
 自動運転バスは、フランス製の「NAVYA ARMA」(定員10名:オペレーター除く)、8~9時間充電することで200km走行可能な車両を使用しています。走行は自動と手動の切替が可能となっており、約7割が自動、交差点付近や障害物回避のための約3割がコントローラーを用いた手動操作となっています。時速約20kmで走行するため、道路上には自動運転バスマークやバス停マークの表示がされていました。低速であり、渋滞発生の要因となるため、後続の一般車は自動運転バスを追い越すことが可能です。
 導入後、地域からは、日常生活の利便性向上に留まらず、自動運転バスの低速走行により、法定速度が遵守されるようになったこと、障害物となる路上駐車が減ったことが高く評価され、運行開始から3年間で約13億円の広告宣伝効果もあったとのことです(皆さんもメディアの特集等でご覧になっているのではないでしょうか)。このような実績から、今後は新たな車両の導入、路線や運行時間の拡大を予定しているとのことでした。
 これまで言葉と知識が先行していた自動運転ですが、今回の見学で体験し、今後の交通施策について考える良い機会となりました。
 最後に、自動運転バス起終点の「道の駅さかい」で販売されている「干し芋」は絶品でした。隈研吾氏が設計を手掛けた境町地場産品研究開発施設「S-Lab」で製造されており、ふるさと納税返礼品においても人気商品のようです。境町の取組が気になった方、ぜひいかがでしょうか。

清水建設(株) 棚橋知世(産学共働若手勉強会)

道路上のバス停表示
道路上のバス停表示
自動運転バス車両「NAVYA ARMA」
自動運転バス車両「NAVYA ARMA」
遠隔監視室にて集合写真
遠隔監視室にて集合写真