活動レポート

秋の見学会

2023年度秋の見学会 報告 成瀬ダム&秋田駅&秋田・能代洋上風力

 秋の見学会として10月17日、18日の2日間、秋田県での見学会を開催しました。
 次世代の建設生産システムでの施工を実現している成瀬ダムの建設現場、地域創生として進められているJR秋田駅周辺の再開発、秋田県沿岸で展開されている風力発電関連施設の見学を行いました。参加者は29名でした。
 1日目は、大曲駅から成瀬ダム建設現場へ向かうバスの車内で、鹿島建設の奈須野恭伸プロジェクト推進部長(成瀬ダム堤体打設工事の前所長)より、動画を交えて事業目的や工事概要、建設現場での先進的な取り組みについてご説明いただきました。現場に到着後は監理技術者の大木洋和様のご案内で、施工の様子を見学しました。ダム堤体上ではCSG(Cemented Sand and Gravel)の敷均し・転圧作業が行われており、自律運転するブルドーザ2台と振動ローラ4台の稼働状況を直接見ながら、当現場で使われている次世代の建設生産システムや、当現場の特徴などについてお話をうかがいました。システム上で最適化された計画に従って建設機械が自律運転することにより、施工の省人化や効率化といった生産性向上を実現するとともに、建設機械の最適な運転による低炭素化への貢献や、CSGの品質安定の効果も得られるとの説明がありました。
 現場内に併設されるKAJIMA DXLABOでは、ジオラマや技術の展示パネルを参加者それぞれがARで体感しながら説明を受けました。あわせてご案内いただいたCSGのプラントやベルトコンベアといった仮設備からも、当現場の大きなスケール感を感じることができました。
 現場への道中では、現場の担い手に関する興味深いお話もうかがいました。当現場は冬季の5ヶ月間におよぶ休工に伴い、技能者の確保にも大変なご苦労があるとのことでした。作業に従事する約550名の技能者のうち、約100名が外国籍(多くはスリランカ人)で、国を離れて働く彼らも快適に暮らすことができるよう、工夫を凝らされているとうかがいました。外国籍の技能者も地域交流会を通じ、地元企業と協力して彼らの故郷の味を再現したスリランカカレーを商品化するなど地域の活性化に貢献しているそうです。成瀬ダム堤体打設工事 https://www.narusedam.jp/
 2日目は、JR東日本マーケティング本部 永杉博正マネージャー、秋田支社 三河直樹マネージャーより、秋田駅のリニューアルと駅まちづくりについてご説明いただきました。駅周辺は地方創生へのコンパクトなまちづくりに向けた再開発が秋田県、秋田市、JR東日本の3者により進められています。秋田駅は、地元の秋田杉をふんだんに使用した内装や家具を配置してリニューアルされ、県都玄関口としての顔が形成されています。駅前は駐車場から芝生広場に変更され、人々の憩いと賑わい創出の場となっています。またスポーツを核としたまちづくりの一環で、駅周辺にはバスケット専用体育館と合宿所が設置され、社会人バスケットチームの練習や試合、大学の合宿などが行われています。これらの取り組みにより中心部人口は増加傾向にあり、交通機能中心のまちから人のためのまちへと変化していることが印象的でした。
「pdf資料 ノーザンステーションゲート秋田の取組みについて(JR東日本提供)」
 次に能代市へ移動、車内にて、羽藤会長より日本海沿岸東北自動車道が四全総において日本海側の国土軸と定められ整備されてきた歴史や将来のモビリティの変化と風力発電の活用の可能性についてコメントがありました。
 日立パワーソリューションズの工藤弘基 能代サービスセンタ長より施設の概要についてご説明いただきました。ここは青森県、秋田県、岩手県で稼働している約160基の風力発電設備の維持管理を11名で担当しています。また安全作業や構造を学ぶトレーニングセンタも併設しており、今後風力発電が増加していくと維持管理の人材は不足すると考えられるため、自社での育成も目的としているとのことです。
 続いて風の松原風力発電所の蓄電池施設について、大森建設の石井昭浩技術営業部長よりご説明いただきました。この施設は風力発電の出力変動を緩和することが目的ですが、東日本大震災を受けて、風力と蓄電池を組み合わせることで防災拠点への電力を連続して供給が可能となっており、地元貢献への熱い想いを感じました。
「pdf資料 風の松原風力発電事業概要(大森建設提供)」
「pdf資料(仮称)能代山本広域風力発電事業計画概要(大森建設提供)」
 次に能代港沖の港湾区域に林立する洋上風力発電を見学、これは国内初の商業ベースでの大型洋上風力発電で、2022年12月より能代港で20基、2023 年1 月より秋田港で13基運転が開始されています。事業者である秋田洋上風力発電の岡垣啓司社長からは、営業開始までのプロセスや発電事業の概要についてご説明をいただきました。運転管理人員の半分が地元雇用とし、維持管理を地元企業に委託するなど、20年という長期間となる再エネ事業にとって地元貢献は不可欠と強調されていました。また建設を担当した鹿島建設の清水光 グループ長からは、日本は洋上風力建設の実績が少ないことから国際約款での請負契約が求められたこと、完成時期の厳守がある一方で風が強い地域で海上の施工期間が限られかつ漁業にも配慮する必要があること、大型風車建設が可能な作業船の日本洋上での作業は様々な制約が課せられることなど洋上風力ならではの苦労を聞くことができました。
「pdf資料 秋田港能代港洋上風力発電工事の概要(鹿島建設提供)」
 海岸線や洋上に巨大な風車が立ち並ぶ秋田の風景は壮観であり、再エネの活用が現実的に進んでいることを実感できる見学会でした。

集合写真(成瀬ダム)
集合写真(能代港洋上風力)

関西国際空港熱供給(株) 奥田 豊(広報委員会幹事長)

(株)大林組 森 麻里子(広報委員会副幹事長)

成瀬ダム施工現場
成瀬ダム施工現場
成瀬ダム自動化施工状況
成瀬ダム自動化施工状況
秋田杉をふんだんに使用した秋田駅のリニューアル
秋田杉をふんだんに使用した秋田駅のリニューアル
秋田駅前の芝生広場
秋田駅前の芝生広場
秋田ノーザンゲートスクエアのバスケットコート 屋根は秋田杉を活用したハイブリット構造
秋田ノーザンゲートスクエアのバスケットコート 屋根は秋田杉を活用したハイブリット構造
日立パワーソリューションズの能代サービスセンタ内にあるトレーニング施設
日立パワーソリューションズの能代サービスセンタ内にあるトレーニング施設
風の松原風力発電所の蓄電池施設
風の松原風力発電所の蓄電池施設
能代港洋上風力発電の風車
能代港洋上風力発電の風車
秋田港沖の洋上風力発電の風車
秋田港沖の洋上風力発電の風車