活動レポート

春の見学会

2023年度 地域問題小研究会 見学会及びミニ講演会 報告

2022年度に立ち上げた「地域問題小研究会」の活動の一環として、昨年11月の沖縄見学会に続き、6月1日、2日の2日間、北海道見学会(札幌市・北広島市)を開催しました。

 札幌都心部における北海道新幹線や駅交通ターミナルなどの建設予定地や、野球観戦だけでなく賑わい・交流の創出の場を一体的に整備し注目されている北海道ボールパークFビレッジを見学するとともに、ミニ講演会では、期待される役割や波及効果、北海道のモビリティやまちづくりのあり方について、関係者に講演いただき、会場で質疑が行われました。参加者は38名でした。
 1日目は、新千歳空港から札幌中心部に向かうバス車内にて、北海道開発局建設部道路計画課の松本一城道路調査官より、「北海道は高規格幹線道路の整備率が70%未満と、全国平均が85%超であるのに対して遅れている。特に端部の地域で整備率が低い。JRの廃止やバスがない状況もあり、道路整備の地元要望の声が非常に高い。」との話がありました。
 札幌中心部に到着してからは、160mの高さに展望フロアがあるJRタワー展望室に上り、街を眺めながら、札幌市まちづくり政策局総合交通計画部佐藤一郎課長、北海道開発局札幌開発建設部の本田肇事業調整官より、新幹線関連、再開発関連、都心アクセス道路および札幌駅交通ターミナル整備の事業計画の説明を受けました。北海道新幹線の札幌延伸(2030年度末開業予定)や2030年冬季五輪の招致など、2030年に向けて各種整備が進められているとのことです。また交通広場を眺めると、冷暖房プラントの熱を利用して雪を溶かす、投雪口(4か所)が見えました。
 展望室から降りた後は、札幌中心部を徒歩で視察しました。現在の札幌駅前バスターミナル(今年9月30日閉鎖予定)は歩行者通路が狭く、また吹雪が入る構造ですが、新しいバスターミナルは、ホームドアが整備され、高速バスは北海道新幹線と直結し、札幌駅周辺に分散しているバス乗降場が集約される計画となっています。
 続いて、アンダーパス連続化事業により、水辺空間の整備など有効利用されている国道5号の創成川通を通り、2011年に開通した札幌駅前通りの地下にある幅員20m(通路部分12m、憩いの空間4m×2)×520mの「チ・カ・ホ」を視察しました。「チ・カ・ホ」と建物を接続すれば、容積率が150%に緩和される指針により、回遊性が高められているなど、様々な工夫がされていました。そして、三井不動産(株)、日本郵政グループからの都市計画提案により整備された、赤レンガ倉庫前の札幌市北3条広場(アカプラ)を見学しました。
 この後、ミニ講演会が開催されました。
 2日目の午前中は、北海道新幹線工事現場を視察しました。はじめに、小樽~札幌間の札樽トンネル区間(約26㎞)のうち、シールドトンネル工区である札幌工区の発進立坑にて、(独)鉄道・運輸機構北海道新幹線建設局札幌西鉄道建設所の長川善彦所長以下に、事業概要・状況のご説明と、立坑内のご案内をいただきました。発進立坑から小樽方面に先行して進め工区境まで既に到達し、現在は、札幌方面への発進に向けて準備しているとのことでした。立坑は、深さ50mあり、地上から約30mにシールド(直径12m)の頂部がありました。シールド機がぶつかって、撤去までに時間を要した岩塊の一部を見たり、掘削土の運搬方法など色々教えていただいたりしました。
 続いて、開削トンネル区間である桑園地区にバスで移動し、札幌建設所の藤川博樹所長にご案内いただきました。函館本線に近接しており、クレーンが鉄道施設との接触などを避けるため、レーザーバリアを用いているとのことでした。鋼製地中連壁(NS-BOX)の工事が行われている状況で、土とセメントスラリーの混合・撹拌や、部材の建込みをしている様子を観察することができました。
 午後は、北海道ボールパークFビレッジを視察し、(株)ファイターズスポーツ&エンターテイメント事業統轄本部企画統括部地域連携・アカデミー部の柳下堅志部長に、スタジアムや外構などをご案内いただきました。スタジアムは3層構造として、車椅子ご利用者なども利用しやすい施設にしていることや、外構整備は、全体32ha の中で、ボーネルンド運営の子供の遊び場や、グランピング施設、ビラ、店舗、認定保育園、学習施設、住居など、北広島市と連携して、多種多様な施設を誘致していることなど、沢山の参考になる話を伺いました。

 ミニ講演会では、北海道大学大学院工学研究院の岸邦宏教授がコーディネーター、国土交通省 橋本幸北海道局長と当研究会羽藤会長がコメンテーターとして行われ、様々な話題が提供されました。
 はじめに、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 岸谷克己統括役からは、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の建設状況について、そして、北海道旅客鉄道株式会社 今井政人取締役副社長からは、新幹線札幌駅の概要についてご紹介いただきました。
 続いて、札幌市まちづくり政策局総合交通計画部 宮﨑貴雄部長からは、札幌都心の交通プロジェクトと今後について、室蘭工業大学大学院工学研究科の有村幹治教授からは、地方都市におけるモビリティデータの活用と新技術の実装支援について、また、苫小牧市スマートシティ官民連携協議会の溝口龍太委員からは、産官学共創による地方都市駅前再生・交通結節点整備の取組について、お話しいただきました。
 そして、(株)ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの前沢賢本部長から、北海道ボールパークFビレッジとその未来について、動画を交えながら、ご紹介いただきました。
 最後に、岸邦宏教授に、本講演会について総括いただいた後、当研究会の金子雄一郎理事が閉会の挨拶を行いました。

※なお、本講演会については、動画 での公開(会員限定)をしております。

東急電鉄(株) 梶谷俊夫(広報委員)

JRタワーより
JRタワーより
チ・カ・ホ[札幌駅前通地下広場]
チ・カ・ホ[札幌駅前通地下広場]
北海道新幹線工事見学(発進立坑内)
北海道新幹線工事見学(発進立坑内)
北海道新幹線工事見学(桑園地区)
北海道新幹線工事見学(桑園地区)
エスコンフィールド
エスコンフィールド
エスコンフィールド(外構)
エスコンフィールド(外構)
集合写真
集合写真
ミニ講演会
ミニ講演会