産学共働若手勉強会 オンデマンド交通と自動運転バスの最前線を体験
産学共働若手勉強会では、2025年2月28日に、高萩市のオンデマンド交通「MyRideのるる」と日立市の「ひたちBRT」の見学会を開催し、計9名が参加しました。午前中はまず茨城交通株式会社の方々のご案内のもと、「MyRideのるる」を実際に利用しながら、その仕組みを見学し運行方式を現場で確認しました。午後は日立市都市政策課やひたちBRT自動運転プロジェクト関係者の方々から、BRTの概要や自動運転バスの実証実験についてお話を伺い、その後レベル4の自動運転バスに試乗しました。
高萩市「MyRideのるる」の特徴と運行形態
「MyRideのるる」は、AI を活用した呼び出し型バスで、専用アプリや電話で利用者がリクエストをすると、その都度最適なルートを組んで走行します。朝と夕方の通勤・通学時間帯は既存の路線バスとして運行し、日中は呼び出し対応に切り替えるというハイブリッドスタイルが特徴です。実証運行の開始以来、利用者数は導入前のおよそ1.3倍に増え、1日の最大利用者は221人を記録するなど、順調に利用が広がっています。さらに、地図上に多くの仮想バス停を設置し、利用者は出発地や目的地の近くのバス停まで徒歩で移動することで、車両の巡回効率が上がり、相乗りの機会も増えるなど、生産性向上にも寄与しています。
また、「MyRideのるる」では、乗車時に乗客の名前を確認することで、乗り間違いを防ぐと同時に、予約制であることを意識させ、利用者がオンデマンド交通の仕組みに慣れやすいよう工夫されています。地方の路線バス撤退が続く中、このようなオンデマンド交通の導入が地域の公共交通を支える手段として期待されています。
ひたちBRTと自動運転バスの実証実験
日立市が取り組む「ひたちBRT」は、かつての日立電鉄線の跡地を再活用したバス専用道で、市がインフラを整え、交通事業者が運行を担う公設民営方式によって段階的に整備されています。現在は第II 期区間まで運行が行われており、第III期区間の計画検討も進行中です。
さらに、2025年2月よりレベル4の自動運転バスが専用道区間で本格運行を開始しました。運行区間は一般道との交差や歩行者の横断部があり、車道と歩道の間もガードレールがなく縁石のみで明確に仕切られていない場所も混在しており、様々なシーンが含まれる道路環境となっています。こうした道路環境でも、歩行者を検知したときに適切に減速・停止するなど、安全性を重視した運行制御が行われています。今後は一般道路への適用や遠隔監視型レベル4への移行も視野に入れ、さらなる拡充を目指しているとのことです。
両市の事例はいずれも、利用者にとっての利便性と、自治体や事業者にとっての効率性をうまく両立させている印象を受けました。現場でお話を伺うと、技術的な課題だけでなく、地域住民の理解や制度づくりなど、社会全体で取り組むべきポイントが多いことを再認識しました。他地域への展開やさらなる技術進歩が見込まれるなか、全国の公共交通をめぐる問題を解決する大きなヒントになるのではないかと感じています。
芝浦工業大学 楽 奕平(産学共働若手勉強会)


