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能登半島地震・豪雨災害 現況報告

能登半島地震・豪雨災害 現況報告

筆者は3月、10月上旬、10月下旬の3度に渡り能登半島地震の被災地を訪問し現地調査やボランティア活動に参加してきた。本報告では①復旧状況、②住まいの再建、③道路交通、④避難者支援の4点から現地の状況を報告する。

① 復旧状況:奥能登地域は旧耐震基準の木造家屋の割合が高く倒壊被害が顕著だったほか、珠洲市や能登町など内浦での津波被害、輪島市朝市通りでの火災被害も大きく注目された。3月時点では多くの地区で建物の解体がほとんど進んでいなかったが10月の訪問では解体が進みつつあり、輪島市朝市通り付近も瓦礫の撤去が行われた。一方で9月末の豪雨災害により輪島市町野や南志見では川から溢れた濁流が街を襲い、斜面崩壊に巻き込まれた家屋も多数生じている。

珠洲市鵜飼地区の現状(10/6、筆者撮影(以下同))
珠洲市鵜飼地区の現状(10/6、筆者撮影(以下同))
豪雨災害により暫定盛土が崩壊、落橋も確認された (輪島市町野町、10/6)
豪雨災害により暫定盛土が崩壊、落橋も確認された (輪島市町野町、10/6)

②住まいの再建:仮設住宅の整備も最終段階に入っている。特筆すべき事例としては、輪島漁港や珠洲市蛸島漁港、狼煙漁港(高屋)では比較的敷地を確保しやすかった港内に整備された仮設住宅や、輪島市南志見でのRC基礎・木造かつ瓦屋根を備え景観に配慮した仮設住宅(いわゆる熊本モデル型)などが挙げられる。漁港内に整備された仮設団地は自宅との距離が近いため自宅の片付けもある程度進められており、また漁業関係者にとっては好立地と言え既に港町の日常に溶け込んでいた。蛸島漁港では漁に出る漁船や港内の漁業施設が稼働している状況も確認でき、住民の生活が少しずつ再建されつつあることが伺えた。

輪島港内の仮設住宅(右)(輪島市鳳至町、10/6)
輪島港内の仮設住宅(右)(輪島市鳳至町、10/6)
早朝の蛸島港より漁に出る漁船(珠洲市蛸島町、10/31)
早朝の蛸島港より漁に出る漁船(珠洲市蛸島町、10/31)

③道路交通:地域の主要動脈である、のと里山海道は上下線共に通行可能であるが、崩落箇所の迂回や橋梁継ぎ目での段差が点在し車両の速度低下を引き起こしている。また先日の豪雨災害の影響で奥能登北部を走る県道柳田里線、宇出津町野線沿線では大規模な斜面崩壊が複数箇所で発生し、迂回や片側通行が必要な箇所が多数確認された。通行は確保されているものの円滑な道路交通の復旧には程遠い状況である。

豪雨災害で斜面が崩壊し至る所で片側交互通行規制が敷かれている(輪島市町野町、10/6)
豪雨災害で斜面が崩壊し至る所で片側交互通行規制が敷かれている(輪島市町野町、10/6)

④避難者支援:被害が比較的軽微だった金沢以南の加賀地域では発災直後から広域避難者の生活支援が展開されてきた。二次避難、その後のみなし仮設住宅運用にあたっては地域の宿泊施設及び住宅ストックが最大限活用され、代わりに奥能登からは多くの人が流出、特に若年層は仕事や子供の教育のために加賀地域内で早期(概ね1月中)に再建先を定める傾向にあったとのことである。小松市では避難者が奥能登の仮設住宅に戻る際に地域の保健師を紹介するなどきめ細やかな対応を行なっているほか、金沢市の支援拠点「あつまらんけ~のと!」では編み物活動やカフェなどが定期的に開催され、避難者の交流や相談の場として機能するなど、現場では試行錯誤と共にあたたかな支援が続いている。

あつまらんけ~のと!の様子。編み物活動が行われていた(金沢市、11/1)
あつまらんけ~のと!の様子。編み物活動が行われていた(金沢市、11/1)

最後に

能登半島地震の発生から1年を前に、被災地では仮設住宅での生活再建が本格化し復興に向けて動き出しつつある。被災された方、今なお能登や加賀など各地で支援に尽力している方と共にこれからも能登の復興を見つめていきたい。