活動レポート

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広報委員会見学会 「関西空港の災害対策」報告

  広報委員会では、関西エアポート株式会社のご協力により「関西空港の災害対策の見学会」を1月30日に開催し、家田仁前会長や広報委員など5名が参加しました。
 関西空港は、2018年台風21号の直撃を受け、大規模な浸水より空港機能が停止、さらに連絡橋にタンカーが衝突しアクセス機能が寸断されました。台風被害の教訓から「災害に強い空港づくり」に取り組まれ、護岸の嵩上げ、消波ブロックなどの整備を続けてきた一連の災害対策などが評価され、2021年度土木学会賞技術賞を受賞されました。
 本見学会の前半は、関西空港の防災機能強化対策事業、BCP、第1ターミナル(以下「T1」)のリノベーションの進捗についての説明・質疑、後半は防災事業関連対策について、現場見学を行いました。
 見学会の冒頭、三浦覚 常務執行役員より挨拶があり、台風災害から数年が経過しており、風化することがないようハードとソフトの両方での防災対策の取り組みによって得られた教訓を今後も空港内外の関係者へ継承、共有していくことが大事であると強調されました。
 家田前会長からは、関西空港での台風災害に関連し、東日本大震災での福島第一原子力発電所の津波による電源喪失の経験や福知山線脱線事故を経験したJR西日本など、事故や災害を契機にそこで従事している社員が力、能力を付け、同時に技術的、システム的にも改善されることで、企業が強くなっていくのではないかとコメントされました。
 最初に松井光市 基盤技術部長および瀬口均 副部長より、防災機能強化対策事業の説明を受けました。関西空港を直撃した台風21号は観測史上1位の最大瞬間風速58.1m/s を記録し、越波により1期島内のT1、給油地区、国際貨物地区など広範囲で浸水被害が発生し、また護岸等も大きな被害を受けました。T1では、電源設備が地下にあったため、電源の約50%が失われるとともに、アクセスの寸断により約8000人の旅客が空港内に留まることを余儀なくされました。その後、同社では、被害の技術的解明と復旧・防災対策方針が立てられました。原因究明では、浸水量の97%は護岸からの越波に起因し、総浸水量は230万~270万㎥と推計されました。防災対策方針として、①予防(越波対策)、②減災(浸水対策)、③復旧(排水機能確保)の三本柱が設定され、越波対策では護岸嵩上げ、消波ブロックの設置、防潮壁、滑走路嵩上げ等の整備が実施されました。浸水対策では、T1の電源地上化、地下設備室の水密扉や地下通路への流入を防止する止水板の設置などの整備が実施されました。特に電源地上化は変圧器、発電機のかなりの重量があることから、建物の構造、耐震設計の強度を高めるため、本対策事業の中で最も費用がかかったと説明されました。また復旧においては、早期に機能回復するための大型排水ポンプ車の配備などを行っています。防災機能強化対策事業は、全体で2019年から2022年までの工期で実施されました。消波ブロック工事については4万個の製作・搬入が必要で、当初、3年はかかると想定していたが、2期島の製作ヤードに加え、大阪府が管理する未供用地も確保し2か所で製作、コンクリートの供給体制も整えたことにより、工期を半分に短縮することができました。このように関係者との調整能力や工期の短縮など事業のマネジメントが評価され、前述の土木学会賞技術賞の受賞につながったとのことでした。
 次に奥田豊広報委員会幹事長(関西国際空港熱供給)から関西エアポートBCPについて説明がありました。BCPでは24時間以内の復旧目標やその間の旅客対応、災害発生時様々な関係機関との連携を図るためのJointCrisis Management Group(総合対策本部)の設置について説明を受けました。
 続いて、T1リノベーション部 熊田剛夫 副部長から現在工事が進められているT1のリノベーション事業について説明を受けました。T1リノベーションは、今後の国際線需要拡大に備え、国際線の年間受入旅客数を約1200万人から約3000万人に拡大を図るため、国際線と国内線エリア配置の見直しなど、4フェーズに分けて実施中であり、2025年大阪・関西万博開催までに主要な工事を完了する予定とのことです。
 防災事業の現場見学は、電源を地上化したビルやT1内の止水板、水密扉の設置箇所について説明を受け、続いてバスで移動し、1期島制限区域内から嵩上げした護岸や消波ブロックの設置状況を見学しました。東側及び南側護岸嵩上げエリアの消波ブロック(12~ 20t/ 個)を4万個設置した箇所では、その広大なスケールと海から吹く風を肌で感じ、本視察で特別印象に残りました。
 本見学会では防災対策の技術、課題などについて意見交換させて頂き、現地を見ることができ改めて防災対策の重要性を再認識いたしました。

日本工営(株) 木村 剛(広報委員)

防災事業の説明でコメントされる家田前会長
防災事業の説明でコメントされる家田前会長
関西エアポートによる説明
関西エアポートによる説明
電源を地上化したビル
電源を地上化したビル
旅客ターミナル地下の水密扉
旅客ターミナル地下の水密扉
南側護岸の嵩上げと消波ブロックの設置エリア
南側護岸の嵩上げと消波ブロックの設置エリア
見学会参加者集合写真
見学会参加者集合写真